やりがい搾取とは?若者が気を付けるべき”やりがい搾取”の実態

やりがい搾取の特徴

やりがい搾取の意味

やりがい搾取とは、企業側の思惑で金銭的な報酬よりも「やりがい」という無形の報酬に目を向けさせられることにより、最低限の賃金や長時間労働などの劣悪な環境を「仕方がない」と思わせる構造の事を言います。  

 
この「やりがい搾取(読み方:さくしゅ)」という言葉自体は、もともと存在していた言葉ではなく、東京大学教授で教育社会学者でもある本田由紀氏が作った造語です。

 
これは2007年前後に本田由紀氏が、若者による働き過ぎの原因として「やりがいの搾取」があると分析し、この言葉を自身の著書などで使い始めたことがきっかけとなったんですね。

 
また、2017年には「逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)」という漫画原作のドラマの中で、主人公のみくりが発した「人の善意につけ込んで労働力をタダで使おうとする、それは搾取です!」とセリフが話題となり、この言葉が再び注目を集めることになります。

やりがい搾取の例

創業間もないベンチャー企業

やりがい搾取の最も典型的な例かもしれませんが、創業したばかりの”若い会社”のほとんどは、最初から潤沢な資金や人材には恵まれていません。

 
ですがトップの思想や理念に共感し低賃金や長時間労働でも「やりがい」や「成長」を目的に働いてしまう若者がいます。

 
ただ、「やりがい」だけを目的にこういった環境で働いても長くは続かないので、1年や2年などの短期間で離職する傾向が非常に強いのが特徴です。

 
経営資源がない会社にとっては、事業をうまく軌道に乗せるための「テクニックのうちの一つ」とも言えますね。

参考:米国ITベンチャー「やりがい搾取」の実態 – blogos

フルーツ(果物)売り

若者のフルーツ売り。人によっては駅前で声をかけられた事があるかもしれませんが、飛び込み営業もしており企業や一般家庭にも訪問販売をしています。

 
これは業者から安く買い叩いた売れ残りの果物を売りさばくビジネスで、一定の売り上げを出して高い成績を残せば、独立して会社が持てるという仕組みが採用されています。

 
ただ、実際には仕事をした分の日給も払われず、売れて初めて発生する完全出来高払い。
多くの人の志望動機になったであろう”独立できる”という話しも疑わしいという結果に。

 
「給料を貰いながら、頑張ればいつか会社を持てる」という触れ込みは”やりがい搾取”の典型なのではと指摘されています。

参考:若者のフルーツ売り、その悪質な実態 – Business Journal

アニメーター(アニメ制作)

あまりイメージがつかない仕事かもしれませんが、アニメーターという仕事は「好きなアニメに関われるだけでも十分」という人も多く、薄給や長い拘束時間を我慢している人が非常に多い。これは業界内やアニメ通の中では周知の事実です。

 
例として若者で年収100万円未満というケースもあり、高い離職率の要因ともされています。

 
これには「自分の好きな仕事をしている」という負い目のようなものもあるため、不満を持った側が経営側との交渉をするなどといった根本的な解決にはなかなかいたらない。

参考:年収100万…アニメ制作の悲惨な現場 – Business Journal

やりがい搾取をする企業の見分け方と対策

やりがい搾取をする企業が使うフレーズ

やりがい搾取をする企業は、基本的に過酷な労働を強いる”ブラック企業”とほぼ同じで、違いとしては下記のように過酷な労働環境を「やりがい」や「自己実現」など綺麗な言葉でカバーし、胡麻化そうとする部分です。

 
世間一般のブラック企業 → 過酷な労働環境 → 「それが当たり前」という思想
やりがい搾取をする企業 → 過酷な労働環境 → 「やりがい」などで綺麗に補填

 
そこで実際に「やりがい搾取」をしてくる会社が使うワードは、下記のような言葉です。

  • 「成長できる」
  • 「子供たちの幸せ」
  • 「社会貢献」
  • 「充実感」
  • 「お客様の笑顔」
  • 「自己実現」

 
やりがい搾取をする会社を避けたい場合には、まず会社のホームページ、面接での担当者の発言、求人広告などにこれらの言葉が必要以上に出てこないかが1つの基準となります。

やりがい搾取をする企業を見抜くポイント

ここまでの内容をひっくり返すようですが、「やりがい」や「成長」などの言葉は簡単に仕事を美化できるため、よく使われる言葉でもあります。

 
重要なのは、そういった綺麗な言葉を使った上で労働者のことを考えているかどうかを見抜くことです。簡単な基準としては、下記の3点に絞って照らし合わせて下さい。

  • 賃金に対して労働内容(時間)が見合っているか
  • 会社(経営者)の思想を都合よく押し付けてこないか
  • 働かせるだけでなく、従業員の将来を考えているか

 
例えば、自分の給料を時給で換算してみて安すぎないか、従業員の生活のことを考えてくれているか。こういった部分を今一度、確認してみましょう。

 
まともな会社は「やりがい」を説いたとしても、十分な給料や適切な労働時間が担保されています。仕事の対価はお金であって、やりがいだけでは生活はしていけません。

 
「やりがい」や「成長」など、もっともらしい言葉を並べて充実感を演出していても、それに反して実際の労働環境が著しく悪い企業には注意しましょう。

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